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以下に、第10章をお送りします。前章までの激動の展開――北朝鮮最高指導者・金一平(キム・イピュ)の独裁崩壊、JSIA(日本秘密捜査局)メンバーの奮闘、拉致被害者の救出、そしてクーデターを成功させた将軍・張光日(チャン・コウイ)の新政権の誕生――を経て、いよいよ物語は終幕へ。拉致被害者の帰国と、その後の北朝鮮・韓国の未来を描きつつ、JSIAの面々が静かに任務を完遂する姿を締めくくります。どうぞご覧ください。
第10章 故郷の地と新たなる朝鮮
1.帰国する拉致被害者たち
中国国境を経由して丹東市の日本総領事館へ駆け込んだ北朝鮮の拉致被害者たちは、そこで保護される形で健康診断やパスポート発給などの手続きを受けた。ほとんどの人が日本から連れ去られて十数年、あるいは数年が経っており、中には当時若かった者が年を取り、すっかり容貌が変わってしまった例もあった。
中国政府も北朝鮮クーデター後の混乱を静観する立場をとっており、日中関係を考慮して拉致被害者の出国は極秘裏に認められる。日本政府はチャーター機や外交ルートを活用して彼らを迅速に帰国させる準備を整え、一行は数週間の調整期間を経て日本の空港へ到着することとなる。
羽田空港に降り立った機内のタラップを降りるとき、被害者たちは何年ぶり、あるいは何十年ぶりに祖国の地を踏む。その瞬間、待ち受けていた家族や支援者が歓声と涙で迎え、報道陣が一斉にフラッシュを浴びせる。
「やっと……帰ってこられた……」
誰もが嗚咽を漏らし、抱き合いながら「ただいま」と繰り返す。政府要人やメディア関係者が集い、その場は感動の渦に包まれる。
2.年老いた家族との再会
ある高齢の両親は、行方不明になった息子や娘を長年探し続けていた。北朝鮮拉致という説が浮上しても確証を得られず、時には「もう亡くなっているのでは」と諦めかけたこともある。しかし、こうして当人が生きた姿で帰国を果たす場面を目の当たりにし、堪えきれない涙を流す。
「こんなに老けちまって……ごめんね、母さん……」
子どもがいつの間にか中年になっている姿を見て、親は「よく生きていてくれた……」と言葉にならない嗚咽を漏らす。周囲の支援者たちもその光景に目頭を押さえ、テレビカメラは一部だけを静かに撮影する。その陰で、政府や外務省、総理官邸の要人は成功を胸をなで下ろす。
3.JSIAの安堵
しかし、この感動的な帰還を実現した**JSIA(日本秘密捜査局)**のメンバーたちは、一切表舞台には立たない。空港の奥まったエリアに控え、一般人や被害者家族の視線には入らないようにしながら、その様子を見守る。
イッチ(鈴木一歩)が小さく微笑み、「長い闘いだったな」と呟く。マッチョ(吉田尚也)やムネ(村上宗徳)も「まさかここまで無事に帰ってこられるとは」と肩を叩き合う。ソー(大谷聡平)は肩の痛みを押さえながら、遠くから被害者と家族の抱擁を見つめ、「やっぱり俺たちの任務は報われたんだ……」と静かに胸を熱くする。
そこに、**ボス(栗山秀和)**が近づいて言う。「お前たちがいたからこそ、多くの人が救われた。国民には知られずとも、これがJSIAの使命だ。誇りに思え」。イッチたちは微笑みながら、深く頭を下げ合った。
4.張光日の軍事政権
一方、北朝鮮では**将軍・張光日(チャン・コウイ)**が金一平(キム・イピュ)の死後に「臨時体制」を樹立し、実質的に軍事政権として国を掌握していた。アメリカ軍の限定攻撃と北朝鮮軍の総崩れで戦火は収束しており、張光日は「これ以上の戦闘を望まない」「核開発は凍結する」と宣言し、周辺国との対話を促す方針を示す。
国内的には軍事政権であるものの、張光日は独裁を緩和する風を見せ、最低限の経済改革を施行する。各地で難民化した住民を救済しつつ、米韓への衝突を回避するためにある程度の譲歩も行う。「我々はチュチェ思想を守りつつも、新時代の朝鮮をつくるのだ」と国営メディアで語り、表向きは融和策を打ち出している。
5.大統領選挙の実施
やがて、張光日は世界への“イメージ改善”を狙い、軍事政権で安定した国内状況を作ったあと、大統領選挙を行うことを宣言する。これは北朝鮮史上初の試みであり、表向きは複数の候補が出馬できる形を取る予定だ。
実際には軍が強い影響力を持っているため、張光日の勝利が確実視されるが、それでも過去のような完全な独裁体制ではなく、最低限の「民主的な外観」を装おうという狙いがある。国内外の専門家は、「まあ形だけの選挙だろうが、それでも金一平時代よりは遥かにマシだ」と評価する声もある。
6.南北統一への動き
一方、かねてから対立関係にあった**大韓民国(韓国)**とも、張光日政権は徐々に協調路線を敷き始める。戦争の危機が去り、北朝鮮の経済が立て直しを急ぐ中、韓国側は支援や投資の拡大を提案し、当面は緩衝地帯を維持しつつも段階的な統一プロセスを検討する。
その流れが約10年続いた結果、北朝鮮(新体制)と韓国の融和が加速し、**「朝鮮民国(Chosŏn Minkoku)」**として統一される壮大な構想が具体化していく。張光日は軍部のトップとして南北協調を推進し、韓国も政治的合意を得て統合を承認、国際社会からも支援が相次ぐようになった。
7.10年後の朝鮮民国
そして10年後、北と南がひとつになる形で、**「朝鮮民国」**として国連に加盟申請を行う。金一平独裁時代の残滓は徐々に取り除かれ、軍事政権が一種の過渡的体制として機能していたが、新たな国家体制を構築する中で、張光日自身も「選挙で選ばれた大統領」として国際社会から認知される存在になっている。
- 核開発は完全に凍結され、一部の核兵器は米国や国際原子力機関(IAEA)の管理下で廃棄が進む
– 経済支援を受けてインフラ整備や食糧事情が改善し、戦争の危機から復興する路線をたどる
– 拉致被害者問題はすでに解決済みとして国際的にも認知され、日本政府との関係も大幅に改善する
もちろんまだ政治や社会の課題は多いが、かつての暗黒時代に比べれば遥かに希望があると多くの人々が感じていた。
8.帰国後の拉致被害者と家族
一方、日本へ帰国した拉致被害者たちは、再び馴染みの家族や友人と共に日々を過ごす。年老いた親との再会を果たし、失った時間を取り戻すべくリハビリや生活支援を受けながら、新たな一歩を踏み出す人々もいる。
「私たちが帰ってこれたのは、多くの人の助けがあったから……特に、名前は知らないけど、陰で戦ってくれた人たちがいると聞いた」
ある女性被害者が涙ながらにテレビ番組でそう話すと、家族会の代表が「本当に感謝しきれません。政府関係者の中に“英雄”がいたのかもしれませんね」と微笑む。彼らの言う“英雄”がJSIAメンバーであることは、表には出ることなく胸の奥に秘められる。
9.JSIAの静かな退場
JSIAリーダーの**ボス(栗山秀和)**は、事後処理のため官邸に呼ばれても「いつものように詳細は伏せる。政治家に表彰されるつもりはない」と述べ、メンバーにも「自分たちの任務は完了した。世界に知られる必要はない」と告げる。
イッチ、マッチョ、ムネ、ソーはそれぞれが疲れを癒しながら、新たなミッションが出るまで国内で訓練や待機を続ける。ノブや峰不二子、佐々木喜朗も後処理に当たり、極秘資料を破棄したり、海外との連絡網を整理したりする。
彼らは誰も表彰状を受け取らず、記者会見にも出ない。だが、拉致被害者の帰国という偉大な成果がその陰にあることを、ただ静かに喜び合うのだった。
10.終焉と新たな秩序
こうして、日朝戦争とも呼ばれた危機は、北朝鮮での金一平暗殺による体制崩壊とクーデター成功、さらにアメリカ空母の威圧と局所空爆によって決着を迎えた。日本国内では最悪の被害を免れ、拉致被害者も奇跡的に救出され、東アジアに平和の兆しが訪れる。
その後、10年をかけて北朝鮮(新体制)と大韓民国(韓国)が統一し、朝鮮民国として国連に加入するという歴史的な事件が実現。張光日がどのような政治を行うかはなお未知数だが、少なくとも核の脅威は解消され、拉致問題の解決が果たされた事実は大きい。
祖国の土を踏んだ被害者たちは老いた家族と抱き合い、「もう二度と離れない」と泣き笑いを交わし、一方で何年も家族を待ちわびた親や兄弟が、「帰ってきてくれて本当にありがとう」と何度も言葉を重ねる。
――JSIAメンバーは遠くからその光景を見つめ、「自分たちの苦労が報われた」と感じながら、またそれぞれの日常に戻っていく。
名もなき影のヒーローたちが去ったあと、歴史は新たな秩序のもとに動き出し、朝鮮半島と日本は未来へ向けて一歩ずつ進んでいくことになる。
これにて第10章は終了です。
- 拉致被害者が家族と再会し、その光景を陰から見守るJSIAメンバー。
- 張光日の軍事政権による暫定統治と大統領選挙の実施、最終的な南北統一への道筋。
- 朝鮮民国として国連に申請するという歴史的大転換。
- JSIAはあくまで陰の存在として名を残さず、任務を完遂し、日朝戦争の危機を結果的に回避する。
これが『日朝戦争開戦』における最終の帰結となります。長きにわたり物語をお読みいただき、誠にありがとうございました。
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